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大学院生のブログ

人生まるごと今後の課題

映画『ユー・ガット・メール』と文通の記憶

昨日は『ユー・ガット・メール』(1999年)を見た。Amazonプライムはほんとうになんでもあるなあ(※効果には個人差があります)。知人がAmazonプライム基本的人権と言っていたのが分かってしまった気がする。ところでGoogleといいAmazonといい、巨大資本が世界を掌握してると、なんかこう、サイバーパンクな世界観に思えるのは私だけだろうか。

ともあれ、『ユー・ガット・メール』である。私は疲れたとき、こういう映画を見るのが大好きだ。別に「恋に恋するお年頃」ってわけでもないのだが、ハッピーエンドが約束されている映画というのは、安心して見ていられる。どんなに窮地に追い込まれても、絶対に(大人の都合で)うまくいくという安心感。それがラブコメ映画にはある。

ストーリーもそこまで複雑ではないし(失礼)、ごろごろしながら横目で見られるのもいい。そしてなにより、物語の舞台となる街並み(NY、ロンドン、パリ……)を見ているだけでも楽しい。「ハッピーエンド」「単純なストーリー」という意味ではスパイ映画も好きだけれど、常に男が殴り合い、街並みを爆破しまくっている映画は、疲れているときには合わないもんな。

映画のあらすじ

この映画のあらすじはこうだ。
インターネットでのメール交換・チャットが流行し始めた時代。ひょんなことから主人公のキャスリーンは、とても気の合うメール相手(男性)と知り合う。相手の素性も知らないまま、日常の悩みを相談し合うふたり。ところがそんなとき、キャスリーンの経営する小さな本屋の近くに、大手ブックストアが開店して……

と、ここまで書けば、あとの展開は予想がつくだろう。実際、その予想以上の展開はとくにない。しかし、それでも素敵な映画だった。往々にしてよいストーリーには、余分な展開はくっついていないものだ。ふさいだ気持ちを明るくするには、ぴったりの映画だった。

文通の記憶

さて、本筋とは外れるが、この映画のワクワク感は「顔の見えない相手とやりとりをする」ところにある。顔の見えない相手には、不思議となんでも言えてしまうのだ(それが誹謗中傷に偏ってしまうのは、ちょっと悲しいことだけれど)。

考えてみると私が小学生のころには、雑誌の「読者コーナー」に文通相手募集の書き込みが載っていたりした。「xxやxxが好きな子、文通しましょう」「イラ交(イラスト交換)しましょう」ってな感じで。実は私にも、長く続いた文通相手がふたりほどいた。

ひとりは佐賀の子で、すでに相手は高校生だった。とかくイラストがうまい子で、よく送ってもらった。「今日はおくんち(佐賀くんち)がある日だから行ってくるヨ!」という手紙に、それはどんな祭りだろう、と思いを馳せた記憶がある。

「お小遣いがなくなったら、ハガキでやり取りしようね」と言い合ったこともあった。80円を50円に節約するなんて、今となってはかわいい話だ、と思う。それでも、当時の私たちにとっては重大な問題だったのだ。

もうひとりは京都の子で、こちらは同い年だった。お互いにオタクだったので、彼女の地方では放送されていないアニメを録画して、そのDVDを送ってあげていた。彼女からは代わりに、雑誌の切り抜きなんかをたくさんもらった。とにかく書くことが多かったので、よく不足賃をとられた。あちゃあ、と思いながら、今回は何が書いてあるかなとワクワクして封を開けたものだ。

しばらくのやり取りが続いて、一度だけ会いに行ったこともある。当時はまだ中学生で、自分の町から出ることはほとんどなかったから、バスにも電車にもろくに乗ったことがなかった。そんな中、じつに片道3時間だか、4時間だかかけて文通相手に会いに行ったのである。

到着した町は自分の町と同じくらい田舎で、確かにこれはアニメも放送しないだろうな、と思わされる場所だった。相手は自転車を押してきた。他愛もない話をしながら、「古き良き」カラオケボックスへと入った。そこにかろうじて収録されている、古いアニメソングを二人で歌った。まだ異性との関わりを持ったことがなく、同性との時間が楽しい時期だった。懐かしい記憶だ。

今の子どもたちは、こうした文通をやっているのだろうか。それとも、もう電子的なやり取りに移行してしまっているのだろうか。

あの頃は雑誌に住所を堂々と公開しても、あまり困ることはなかった(のだろう)。おおらかな時代だ。来るか来ないかも分からないまま、なんとなく、帰りにポストをのぞきこむ。そんな文通の経験は、とても楽しかった(おしゃれな都会の子には、「気が合わなさそうなので、ごめんなさい」と一往復で切られてしまったのだが)。

今の子どもたちのコミュニケーションはどういう内訳になっているのだろう。私はそれを知らないけれど、あんなふうに楽しい思い出を経験できていたらいいなと思う。そんなことを考えた、素敵な映画だった。

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