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大学院生のブログ

人生まるごと今後の課題

青山裕企『「写真で食べていく」ための全力授業』レビュー

書籍レビュー 出版小ネタ

文章を書くのは好きだったが、それと「仕事になるか」は別問題だ。私の場合、仕事を受け始めたのは2年前。とはいっても、最初は分からないことだらけだった。たとえば請求書の出し方とか。単価はまあまあいい方だろうけれど、それでも食っていくには程遠い。「好きなことで、生きていく」のはものすごく大変なのだ。

と、早くも現実にブチ当たっていたところ、梅田の書店で気になる書籍を見つけた。青山裕企『「写真で食べていく」ための全力授業』(玄光社)である。

「写真で食べていく」ための全力授業 « 書籍・ムック | 玄光社

青山氏といえば、制服姿の少女をフェティッシュに撮影した『スクールガール・コンプレックス』(2010年)なんかが有名だろうか。ジャンプしているサラリーマンを撮影した『ソラリーマン』(2009)も同じく有名な作品だ。

スクールガール・コンプレックス SCHOOLGIRL COMPLEX

スクールガール・コンプレックス SCHOOLGIRL COMPLEX

 
スクールガール・コンプレックス──放課後── SCHOOLGIRL COMPLEX 2

スクールガール・コンプレックス──放課後── SCHOOLGIRL COMPLEX 2

 
ソラリーマン―働くって何なんだ?!

ソラリーマン―働くって何なんだ?!

 

 かつて『スクールガール・コンプレックス』の表紙をどこで見かけたとき、「こいつぁとんでもねえスケベな本だぜ……」と思ったことを覚えている。決して直接的なエロではない。下着が見えているわけでもない。のに、ものすごくドキドキしてしまう。

自分の中の「思春期」を引きずり出されるような、切ない感じのエロティシズム。眺めていると、何か悪いことをしているような気分にまでなってくる。そんなカリスマカメラマンが書いた「教科書」とあれば、これは読んでみるほかない。というわけで、この本を購入した。

結論から述べると、この本はかなり良質な「教科書」だったと思う。「カメラマン」が対象だけれど、ライターやイラストレーターといった創作性の強い職業には広く適用できるんじゃないだろうか。

本文は、軽快な筆致で読みやすい。「カメラマン」という職業に対して、夢を与えすぎることもしなければ、奪いすぎることもしない。のっけから「アーティスト志向の『写真家』か、商業志向の『カメラマン』か」という話題に触れられていて好感が持てる。

このうち『写真家』についても、「写真一本では食えず、ほかに収入源があるのが現実」であることが正直に書かれており、この本のタイトルどおり「食べていく」ことを意識した内容なのだなと思わされる。無責任に「カメラマン楽しいよ〜誰でも稼げるよ〜」ってな感じで書かれたのではなく、本気で我々に「食わせる」ことを目的としたのだろう。そんな気がする。

「1時間目」はそんな感じで、自己分析とセルフブランディングを中心に話が進む。本書の内容をざっくりまとめると、こんな感じだ。

  • 「1時間目」
    自分の「売り」を考える、目指す方向を決める

  • 「2時間目」
    そもそも「写真」の仕事にはどういったものがあるのか
    広告、書籍、ブライダル……

  • 「3時間目」
    現場での流れ
    準備物、撮影計画、オファーと納品……

  • 「4時間目」
    仕事を取るための営業
    ポートフォリオ、Webサイト、SNS……

  • 「5時間目」
    報酬(ギャランティー)など金銭の管理
    報酬の決定、見積書/請求書の作成、確定申告……

  • 「6時間目」
    それでも「写真家」を目指したい場合
    作品の販売、ポストカードや小物の販売……

うーむ。こうしてまとめてみてもやはり、バランスのよい教科書だなという感じがする。

Web上で検索できるHow toには、「あなたの売りを見つけよう」程度のところまでは書いてあることが多いのだが、「現場での流れ」や「ギャランティの決定」などに関してはあまり詳しい情報が見つからない(私の探し方が悪いだけかもしれない)。

その点、この本は報酬の決定プロセスやミスの防止策などまで踏み込まれて書かれている。
「人物の撮影の場合、モデルの瞳にキャッチライト(ハイライト)を入れるために白い服を着ていく」なんて、プロのカメラマンでないとなかなか思いつけない小ワザだろう。そういったコツも惜しみなく書かれており、とても魅力的な一冊だ。

個人的には、「いま」を活躍しているカメラマンへのインタビューがたくさんあるのもいい。地方で写真館を開く笠原徹氏のページがあるかと思えば、トラベルフォトライター・インスタグラマーのたじはる(田島知華)氏のページもある。写真へのスタンスや営業スタイルもそれぞれで、「予想以上に『カメラマン』には幅があるんだな」と思わされる。

ライターという職業にしたって、有名コラムニストの○○氏!という人もいれば、クレジットにすら名前が載らないタイプの仕事もある。自分がどういう仕事をしたいのか、そして実際にはどういう仕事があるのか。いろいろなことを考える上で、非常に参考になった一冊だった。

なお、色々なカメラマンのインタビューが載っているものには、ほかにも枻出版社『写真家の流儀』などがある。これもなかなか、読み応えのあるものだった。 

写真家の流儀 (エイムック 3467)

写真家の流儀 (エイムック 3467)

 

とくに動物写真家のインタビューで、「撮れなかったら仕方ない。動物ってそんなもん(※うろ覚え)」みたいなことが書いてあったのがよかった。そのくらいの豪胆さがなければ、ジャングルに分け入って動物たちとやりあうのは難しいのかもしれない。誰かの参考になれば。